獣の臭い(2005)
BS-iドラマ「怪談新耳袋」の一編。いとこの夫が、子供の頃に虐待死させていた動物の霊に憑かれてしまうお話。霊とはいっても姿は見えず、その臭いを感じることしか出来ないけれど、霊能力のある主人公(「ふたりぼっち」と同一キャラクタ?)には虐待の幻影や動物の亡骸が見えてしまう。冬の陽がかげるように、部屋がゆっくりとうす暗くなって虐待の幻影が現れるシーンや、顔に照明を当てず異常なムードを醸し出すシーンなど、かつての鶴田法男や黒沢清を思わせる演出がすばらしい。清水崇以降の新世代監督ながら、旧世代の手法を継承、洗練させることのできる希有な存在だと勝手に期待しているので、ぜひ長編で心霊かサイコホラーを撮って欲しい。
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降霊(1999)
東京ではゴールデンタイムの2時間ドラマとして地上波放映された。この頃は関西テレビ版『学校の怪談』も『女優霊』も知らなかったので、とにかく怖かった記憶がある。心霊ものに耐性のついた今、改めて見てみてみると、その幽霊表現は怖いけれど、ドラマとしてはサスペンス、ミステリに主軸がおかれていることがわかる。特に犯罪を犯してしまった後半は、ホラーとは違う不安感をかきたてられる。
霊能力のある主婦(風吹ジュン)が大学で見てしまう黒い影の幽霊からファミレスでの邪悪な赤い服の足無し幽霊、そして誤って殺してしまった緑の服を着た少女の霊まで、幽霊が見本市のように現れる。さらには後の『ドッペルゲンガー』を思わせるワンシーンも。黒沢作品では物語上生きている人間も照明の当て方で幽霊のように撮ることがあり、冒頭、風吹ジュンが壁際に佇むシーンは今回見返すまで幽霊だと思っていた。
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夏の体育館(1991)
- 監督:鶴田法男
- 脚本:小中千昭
- 「ほんとにあった怖い話 第二夜」収録
オリジナルビデオ(俗に言うVシネマ)として作られた、霊体験再現ドラマシリーズの最初期作品。その後のジャパニーズホラーのお手本になったと思しき演出方法が散見できる。特にこの「第二夜」は音楽の使い方が前作「ほんとにあった怖い話」(1991)にくらべてモダンで、子役の演技力に目をつぶれば、今でも十分に怖い。
体育館にある小部屋(放送室?)に現れる女幽霊は、顔を半分長い髪で隠し、赤いボディコン姿でかくかくと迫ってくる。ここではまだ足下を半分透けさせて幽霊であることをわかりやすくしているものの、その後のジャパニーズホラーの幽霊の基本になった造形。しかし、どうやら鶴田監督自身は自分が発見、発明した演出スタイルを突き詰めることより、センチメンタルなドラマのほうに興味があるようで、続編『新・ほんとにあった怖い話 幽幻界』(1992)ではこのタイプの幽霊を使っていない。
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